2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

「ない」ものに気づく、「ある」ものに目を向ける

「 」「・」「 」 「ない」ものに気づく、「ある」ものに目を向ける 「ない」ために目立つ 一人称の代名詞が省かれている 「 」から「こちら」へ 「 」と「こちら」から「俺」へ ストーリーでも内容でもなく、書かれてそこにある言葉の身振り タイトル、titl…

「欠けている」と名指したときに欠ける

欠けている 数量が足りない 動きに追いつけない 点と線でしかない 書くときに感じる失調 欠けていると書けている 最初に失調がある 「ない」から書けている 「欠けている」と名指したときに欠ける 欠けている 足りない、欠けている、ない。 何かが足りない、…

異、違、移

それは強烈な個性ではなかった。なるほど強烈な個性はまわりの人間たちを、異和感と屈辱感によってだけでも、かなり遠くまで引きずって行くことができる。実際にそんなこともあった。 (古井由吉『先導獣の話』(『木犀の日』所収)講談社文芸文庫p.22) 違…

ジャンルを壊す、ジャンルが壊れる

ジャンル嫌い、ストーリー嫌い 「らしさ」「っぽさ」がジャンルを成立させている 雑誌に連載された小説、新聞に連載された小説 パソコンで執筆してネットで公開される作品 小説を壊す、小説が壊れる 崩壊 崩れ とりとめのないものにこだわる ゆるやかに章が…

「日、月、白、明」、そして「見、目、耳、自」が

古井由吉作『仮往生伝試文』は確かに難解なのですが、理解なんて無粋なものは求めていない気がします。読めば読むほどそんな気がしてなりません。難しいのではなく、むしろ読みにくいのです。そんなわけで、お経と同じで意味なんか知らなくてもいいと決めこ…

「私」を省く

小学生になっても自分のことを「僕」とは言えない子でした。母親はそうとう心配したようですが、それを薄々感じながらも――いやいまになって思うとそう感じていたからこそ――わざと言わなかったのかもしれません。本名を短くした「Jちゃん」を「ぼく」とか「…

知らないものについて読む

文芸作品そのものを読むよりも文芸批評を読むほうが好きでした。大学生時代はちょうど文芸批評の全盛期みたいな雰囲気があり、従来の印象批評の本が相変わらず続々出版され、フランス製のヌーベルクリティックとか英米加製のニュークリティシズム、そして日…

文字を見る

私には「文字を読む」ことが途方もなく難しい行為に思えてなりません。見るのではなく読むことが、です。たいてい見ているのです。見てしまうのです。 読んでいると、文字を追いながら、文字以外の何かを思いうかべたり、思いえがいたり、思いおこしたりして…

文字の顔

ある文章について思い出そうとしているのですが、なかなか出てきません。自分にとってはとても大切な意味を持つ文章なので、書き進めながら何とか思い出してみます。 まずはその文章の前提というか、背景となる話から書きます。 ヨーロッパのある国に、日本…

「似ている」の魅惑

「ワンパターン」は褒め言葉 作家が書くときの癖 繰り返し出てくる光景や身振り 他人の家に入る 共振する身振り 書いてあることを読まずに、書かれていないことを読んでしまう 作品と作家を超えて共振する身振り 「似ている」に依存する 関連記事 「ワンパタ…

他人の家に入る

他人の家に入るとぞくぞくします。こんなことをしていいのだろうかという後ろめたさも覚えます。こういう気持ちが特殊なものかどうかは知りません。話せる友達がいないので聞いたことがないからです。 私は他人の家に入った経験が人よりずっと少ないのではな…