連想でつなぐ

「ない」ものに気づく、「ある」ものに目を向ける

「 」「・」「 」 「ない」ものに気づく、「ある」ものに目を向ける 「ない」ために目立つ 一人称の代名詞が省かれている 「 」から「こちら」へ 「 」と「こちら」から「俺」へ ストーリーでも内容でもなく、書かれてそこにある言葉の身振り タイトル、titl…

「欠けている」と名指したときに欠ける

欠けている 数量が足りない 動きに追いつけない 点と線でしかない 書くときに感じる失調 欠けていると書けている 最初に失調がある 「ない」から書けている 「欠けている」と名指したときに欠ける 欠けている 足りない、欠けている、ない。 何かが足りない、…

異、違、移

それは強烈な個性ではなかった。なるほど強烈な個性はまわりの人間たちを、異和感と屈辱感によってだけでも、かなり遠くまで引きずって行くことができる。実際にそんなこともあった。 (古井由吉『先導獣の話』(『木犀の日』所収)講談社文芸文庫p.22) 違…

ジャンルを壊す、ジャンルが壊れる

ジャンル嫌い、ストーリー嫌い 「らしさ」「っぽさ」がジャンルを成立させている 雑誌に連載された小説、新聞に連載された小説 パソコンで執筆してネットで公開される作品 小説を壊す、小説が壊れる 崩壊 崩れ とりとめのないものにこだわる ゆるやかに章が…

文字を見る

私には「文字を読む」ことが途方もなく難しい行為に思えてなりません。見るのではなく読むことが、です。たいてい見ているのです。見てしまうのです。 読んでいると、文字を追いながら、文字以外の何かを思いうかべたり、思いえがいたり、思いおこしたりして…

文字の顔

ある文章について思い出そうとしているのですが、なかなか出てきません。自分にとってはとても大切な意味を持つ文章なので、書き進めながら何とか思い出してみます。 まずはその文章の前提というか、背景となる話から書きます。 ヨーロッパのある国に、日本…

「似ている」の魅惑

「ワンパターン」は褒め言葉 作家が書くときの癖 繰り返し出てくる光景や身振り 他人の家に入る 共振する身振り 書いてあることを読まずに、書かれていないことを読んでしまう 作品と作家を超えて共振する身振り 「似ている」に依存する 関連記事 「ワンパタ…

他人の家に入る

他人の家に入るとぞくぞくします。こんなことをしていいのだろうかという後ろめたさも覚えます。こういう気持ちが特殊なものかどうかは知りません。話せる友達がいないので聞いたことがないからです。 私は他人の家に入った経験が人よりずっと少ないのではな…

書き手の癖、読み手の癖

このところ吉田修一の小説を読みかえしているのですが、再読するのはぞくぞくするからです。わくわくよりぞくぞくです。 どんなところにぞくぞくするのかと言うと、吉田の諸作品に繰りかえし出てくる動作とか場面なのです。複数の作品に共通して見られる身振…

プライベートな場所、プライベートな部分

他人の家に入るとわくわくするとか、どきどきすることがありませんか? よその家に足を踏み入れた瞬間に、その家独特の匂いがしたり、自分の住まいとは違う湿度を感じたり、何か見てはいけないものと出会う予感がしてどぎまぎすることがないでしょうか。 私…

読みやすい文章、読みにくい文章

黙読しやすい文章 速読しやすい文章 読みやすい文章、読みにくい文章 すごい人たち 長いけど読みやすい文章 耳に入りやすい文章 最後に 黙読しやすい文章 漢字が適度に使われている文章は黙読しやすい気がします。読むというよりも、見て瞬間的に意味を取る…

一人でいるべき場所

このところ、夜になるとやって来る女性がいます。枕元に立つのです。顔はよく見えないのですけど。というのは、半分冗談です。神仏のたぐいは信じていませんし、超常現象とか神秘体験みたいなことはほとんど無縁で生きてきました。でも、半分冗談ですから、…

意味のある影、意味のない影

影も陰も姿も像も反射も、すべてがかげと呼ばれていることに気づきます。 (拙文「「気づく」は「遅れる」と同時に起こっているのかもしれません。」より) 影をうつす、影がうつる 一対一に対応する目映い影 言葉という影が、影という言葉に 正確に、細かく…

雨に濡れながら、あなたを待つ

雨、濡れる、待つ。 この三つが出てくる歌はとても多い気がします。私は音楽には疎いので、数えたことも調べたこともありません。そんな気がするだけです。 そういえば、初めて買ったレコードが雨の出てくる曲でした。これは待つ歌ではありませんけど。 私が…

影に先立つ【引用の織物】

ガラスの内には典雅なニス塗りの、棺が飾られて、これも朝日を浴びていた。店の奥にはさらにいくつかの棺が、すこしずつ意匠を異にするようで、壁や椅子にやすらかに立てかけられ、楽器のようにも見えた。(古井由吉作「物に立たれて」(『仮往生伝試文』所…

ガラスをめぐる連想と思い出

簡単に言うと、「Aだから、Bだから、Cだから、Dだから……」という論理っぽいつながりではなく、また「Aして、次にBして、それでもってCして、それからDして……」という物語っぽい流れでもなく、「Aといえば、Bといえば、Cといえば、Dといえば……」…

人に動物を感じるとき

動物、生物、宇宙人 知覚、五感、距離 痛みを推しはかる 身びいき、擬人 作意、作為 意識的な擬人、無意識の擬人、深層的な擬人 鏡の中の話だと意識する、意識しない ひと休み 恥ずかしさ プライベートな行為、プライベートな仕草 においを嗅ぐ、鏡を覗きこ…