2023-01-01から1年間の記事一覧

透明な言葉、透明な文章

やはり、ガラスはそのものを見るためではなく、向こうや彼方を見るものだと痛感します。それどころか、ひょっとすると別世界や異世界を見るためのものではないでしょうか。 考えれば考えるほど、言葉に似ています。言葉は目の前にあってそれが見えないときに…

意味のある影、意味のない影

影も陰も姿も像も反射も、すべてがかげと呼ばれていることに気づきます。 (拙文「「気づく」は「遅れる」と同時に起こっているのかもしれません。」より) 影をうつす、影がうつる 一対一に対応する目映い影 言葉という影が、影という言葉に 正確に、細かく…

雨に濡れながら、あなたを待つ

雨、濡れる、待つ。 この三つが出てくる歌はとても多い気がします。私は音楽には疎いので、数えたことも調べたこともありません。そんな気がするだけです。 そういえば、初めて買ったレコードが雨の出てくる曲でした。これは待つ歌ではありませんけど。 私が…

「AとB」での主役は「と」なのです

「AとB」と書いてあると、AとBのあいだに何らかの関係を見てしまいます。さもなければ、「と」で結ばれているはずがない気がするからでしょう。 ロミオとジュリエット、ピンクとグレー、『男と女』(Un homme et une femme)、女と男、Ebony and Ivory、…

反意語の同意語は同意語ではないか

「SとM」と書くと両者のあいだに反対の関係を見ることが多いように、「AとB」というぐあいに「と」でつながれたもの同士を反意語や対立関係にあるとみなすのが一種の紋切り型になっている気がします。 「と」をめぐっての、この辺の話は、蓮實重彦先生経…

敬体小説を求めて

敬体と常体 『日の名残り』 『わたしを離さないで』 『痴人の愛』 敬体で書かれた小説についてのメモ 敬体と常体 あれは「です・ます調」で書かれていた、とはっきり記憶している小説があります。童話や昔話を除いての話です。どんな文体だったかを覚えてい…

影に先立つ【引用の織物】

ガラスの内には典雅なニス塗りの、棺が飾られて、これも朝日を浴びていた。店の奥にはさらにいくつかの棺が、すこしずつ意匠を異にするようで、壁や椅子にやすらかに立てかけられ、楽器のようにも見えた。(古井由吉作「物に立たれて」(『仮往生伝試文』所…

土地の名をうたう(英語編)

San Francisco California San Jose Massachusetts Manchester & Liverpool Scarborough America home、country home San Francisco 曲にしやすい地名があるような気がします。発音しただけで、器用な人ならメロディーをつくってしまうくらい語呂がいいので…

「この詩は、まちがっています」

間違っていますか? 種明かし 敬体、常体、口語体、文語体 谷崎潤一郎作『痴人の愛』、江戸川乱歩作『鏡地獄』 間違っていますか? 灰谷健次郎の小説に『日曜日の反逆』という短編があります。 国道で「ヒッチハイクの合図」をしていた少年を、男は車で目的…

ガラスをめぐる連想と思い出

簡単に言うと、「Aだから、Bだから、Cだから、Dだから……」という論理っぽいつながりではなく、また「Aして、次にBして、それでもってCして、それからDして……」という物語っぽい流れでもなく、「Aといえば、Bといえば、Cといえば、Dといえば……」…

人に動物を感じるとき

動物、生物、宇宙人 知覚、五感、距離 痛みを推しはかる 身びいき、擬人 作意、作為 意識的な擬人、無意識の擬人、深層的な擬人 鏡の中の話だと意識する、意識しない ひと休み 恥ずかしさ プライベートな行為、プライベートな仕草 においを嗅ぐ、鏡を覗きこ…

【小話】ごみは名詞に似ている

自然界には名詞に相当するものがありません。これを実感するためには「ごみ」という名詞について考えるといいと思います。ごみは人工物だという考え方がありますが、名詞も人工物にほかならないからです。 朝配達されたものは新聞、読み終わると新聞紙。新聞…

【エッセイ】ごみと意味は似ている

ごみは人工物 出す、残す 逸脱と無駄 ごみと意味は似ている 新聞、新聞紙、古新聞 何と呼ばれるかは時と場合と人による 名詞の本質 意味とごみは似ている 何に貼っているのか分からない ごみ学 ごみは人工物 ごみとは人工物であり、ごみは人にとってごみとし…

【夜話】同床異夢、異床同夢

寝入るとき、人はとつぜん一人になります。二人で抱きあって寝ていたとしても、眠りに入った瞬間に二人は別れます。どんなに愛し合っていても、二人いっしょに眠りの中にいることはできません。 お墓とはちがうのです。そんなの、嫌ですか? 悲しいですか? …

【夜話】夜に洗濯をする

人は夜になると洗濯をします。洗濯機を回すのではなく、自分の手でごしごし洗うのです。何を洗うのかというと、心、意識、魂、記憶です。魂の洗濯、意識の洗濯なんて何だか難しく聞こえますが、誰でもやっていることなのです。 で、何を洗うのかというと、汚…